Nagisa Momoe

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中華人民共和国甘粛省四川省陝西省)。湖北省湖南省では絶滅。

化石記録から、古くは北京周辺からベトナム北部、ミャンマー北部にかけて分布していたと考えられている。

歯列は門歯が上下6本ずつ、犬歯が上下2本ずつ、小臼歯は上下8本ずつ、臼歯は上顎4本、下顎6本の計42本。臼歯は大型でタケ類を噛み砕くのに適していて、顔も幅広い。食道には輪状の角質が並ぶ。胃の隔壁は厚い。小腸はクマ科内でも短く(表面積が小さい)、盲腸や直腸の表面積は大きい。肛門や性器の周辺に、分泌腺がある。

乳頭の数は4個。

体長・体重
胴長(体長)120 - 150センチメートル。体重オスは100キログラム、メスは90キログラム(飼育個体ではオス120キログラム、メス100キログラム)。立ち上がると170cm程度になる。
体毛
全身は分厚い体毛で覆われる。眼の周り、耳、四肢、背中の両肩の間の毛が黒く、他の部分は白色(クリーム色)である。種小名melanoleucaは「黒白の」の意。この模様や色使いは「単独行動が維持できるように近すぎる距離での遭遇を回避するのに役立っている」「周りの景色に溶け込んで外敵の目から逃れるためのカモフラージュの役割を果たしていた」等と考えられている。色彩は古くは捕食者から輪郭をごまかすのに役立ったり積雪地域での保護色だったとする説もあるが、現在では人間以外の捕食者はほとんどおらず雪もあまりない環境で生活している。
ジャイアントパンダの毛は軟らかそうなイメージがあるが、軟らかいのは生後約1年くらいまでであり、成獣の毛は豚毛ブラシに近く、比較的硬い。毛皮は、硬くて脂ぎっている。

2~3頭身の乳幼児体型で大きい。また目・鼻・口は顔の下半分に集中している。堅い竹を噛み潰す必要上、筋肉が頭蓋骨の上方に位置するため額も広い。

尾長10 - 15センチメートル。尾はほとんど成長しないため、成獣では目立たない。ジャイアントパンダのぬいぐるみ・人形・キャラクターグッズなどのなかには、尾を黒く塗った商品を見かけるが、汚れなどによる誤解や思い込みに基づいて色付けされており、本種の尾の色は正しくは白色(クリーム色)である。
幼少期
生まれた直後は毛が一切生えておらず、薄いピンク色をしている。生後約1週間から十日程で毛根の色が透けるため白黒模様が見え始める。生後1か月ほど経つと親と同じような模様の毛が生え揃う。
出産直後の幼獣は体長15センチメートル。体重85 - 140グラム。

通常、クマは前肢の構造上、物を掴むという動作ができない。しかし、唯一ジャイアントパンダは竹を掴むことができるように前肢周辺の骨が特殊に進化している。第一中手骨(親指)側にある撓側種子骨と第五中手骨(小指)側にある副手根骨が巨大化して指状の突起となっており、その突起を利用して物を押さえ込む。撓側種子骨は人間の親指のように見えることから「偽の親指」や「第六の指」と呼ばれている。
ジャイアントパンダは撓側種子骨があることで物を掴めると長い間考えられてきたが、実際に竹のような太さの棒状の物体を掴むには撓側種子骨に加え、「第七の指」副手根骨が必要であることが、遠藤秀紀ら (1999) によって示された。パンダがこれら2つの骨を使って物を掴む仕組みは、論文の中で「ダブル・ピンサー」、すなわち「パンダの掌の二重ペンチ構造」と紹介されている。

眼の周りの模様が垂れ目のような形をしているが、実際の眼は小さく上がり気味で鋭い目付きである。視力はあまりよくないと考えられていたが、研究によって2000年代、灰色と様々な色合いを区別できることが確認された。
内臓
消化器官や歯の構造はクマやアザラシ等、他の肉食動物と大変似ている。犬歯は大きく、奥歯も大きく平らな臼歯で人間のおよそ7倍の大きさである。腸や盲腸は草食性としては短い構造がデメリットとなり、セルロースを多く含む竹などの食物を食べた場合、栄養摂取の効率が低く、それを量で補うため、ジャイアントパンダは一日の大半を竹を食べることに費やしている。また、陝西省仏坪県の自然保護業務関係者は、三官廟一帯で秦嶺の野生のパンダが牛の足の骨をかじった跡を確認している。
ジャイアントパンダはこれまでアルビノの個体が確認されておらず、その姿や存在を実証する術もなかったことから「存在し得ないもの」と見られていたが、2019年4月中旬に四川省臥竜国立自然保護区にて真っ白な毛色のジャイアントパンダが歩行している様子を山中に設置されたカメラが捉えており、目が赤く足の部分の毛も白いことから、同地管理局では紛れもないアルビノの個体であるとされている。さらに同管理局によれば、専門家は「外部の特徴からこのパンダは遺伝子上の異常が原因で白化した」と分析しているという。

標高1,200 - 4,100メートル(主に1,500 - 3,000メートル)にある、竹林に生息する。3.9 - 6.2平方キロメートルの、行動圏内で生活する。1日あたり500メートル以上を移動することはまれ。昼夜を問わずに活動するが、薄明薄暮性傾向が強い。冬季になると、積雪の少ない標高800メートルくらいの地域へ移動する。

生後40 - 60日で開眼する。授乳期間は8 - 9か月。生後5 - 6か月でタケなどを食べるようになる。生後4 - 5年で、性成熟すると考えられている。飼育下での最長寿命は34年だが、通常は長くて26年。

食事食性の99 %を、タケ類やササ類の葉・幹・新芽(タケノコ)が占める。小型哺乳類・魚・昆虫等の小動物、果物を食べることもあり、他のクマ類と同様に肉食を含む雑食性の特徴も微少であるが残っている。イチハス・クロッカス・リンドウなど他の植物質、ネズミ類・ナキウサギ類などの小型哺乳類、魚類などを食べた例もある。1日のうち55%(平均14時間)を採食に費やすが、消化器官が植物の消化に適していないため栄養摂取の効率が低いためとされる。消化率は約20%で、食後約12時間(タケノコでは約5時間)で排泄される。1日あたり10 - 18キログラム、水分の多いものだと38キログラムの食物を食べる。これは体重比にして、約45 %の量に達する。氷期の到来による気候変動がもたらす食糧不足から偏食を余儀なくされ、常に入手しやすい竹ばかり食べるようになったと考えられている。しかしながら現在は、中国の飼育環境では、竹以外にも肉や野菜などを中心とした餌が与えられ、竹食中心とは言いがたいのが現状である。野生下でも、稀に人里に降りて家畜を食い殺す事件が発生するなど、機会があれば生肉を拒まない。行動群れや家族を形成せず、基本的に単独で行動している。他のクマ科動物と異なり、冬眠はしない。繁殖繁殖期は年に一度、3月から5月の間であり、マーキング(territorial marking)が行われることもある。メスの受胎が可能な期間は数日ほど。妊娠期間は3か月から6か月で、洞窟や樹洞で出産する。1回に1 - 2頭の幼獣を産む。飼育下では3頭を産んだ例もある。出産間隔は隔年だが、幼獣が早期に死亡すると、翌年に出産することもある。繁殖力は低い部類に入り、乱獲と並んでパンダの絶滅危機の原因でもある。近年の研究によって、発情期以外でも声と匂い付けによって他のパンダと頻繁にコミュニケーションをとり、しばしば交流することが判明している。クマ科の気性外見や動作の特徴は人間にとって「愛らしさ」と映り、そのような面が注目を集めるが、クマ科動物として気性の荒い一面も併せ持っている。動物園の飼育員や見学客などが襲われる事件が、過去には何件か発生している。